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ラグビーのキックの種類と蹴り方【キックコーチが Strike と Push で解説】

ゴールポストの根元の芝生に置かれたラグビーボール

ラグビーのキックで、いちばん大事なことはひとつです。足の甲(足の重心)で、ボールの重心を蹴ること。

そのうえで、キックは大きく分けて Strike(殴る) と Push(押す) の2種類です。種類がたくさんあるように見えても、この2つを場面によって使い分けているだけです。

この記事では、2種類のキックの違いと、ラグビーで使う主なキック、うまくなるための練習を説明します。

この記事を書いた人:丸田喬仁(キックコーチ/Japan Kicking Academy 代表)。アメリカンフットボール関東大学1部リーグで、1シーズン最多得点の歴代記録(キックのみ63点)を持つ。小学2年生から71歳まで、のべ3,000名以上を指導。

いちばん大事なこと:足の甲でボールの重心を蹴る

足の甲は「足の重心」です。足の重心でボールの重心を叩けると、いちばん効率よくボールが飛びます。

足の重心で当てないと、足首が底屈・背屈のどちらかに動いてしまい、エネルギーがロスします。

うまく蹴れている選手のキックは、「ドン!」と重い打撃音がします。ボールの重心を正確に叩いている証拠です。

キックは2種類:Strike と Push

Strike(殴る)のキック

ボールという物体に、どうやって大きな衝撃を伝えるかをいちばん大切にする蹴り方です。インパクトの瞬間に体の関節を一直線に整列させたり、体をねじる力を使ったりして、遠くへ飛ばします。

「パントをもっと遠くへ」「コンバージョンで飛距離を出したい」「ハイパントをもっと高く」。こうした願いは、ぜんぶ Strike です。

Strike の動きには、体の中で止めている箇所があります。野球の大谷選手が160km/hのストレートを投げるとき、ボクサーがノックダウンのパンチを打つときも同じです。

Push(押す)のキック

膝を少し曲げたままボールに足を当て、膝を伸ばす力でボールを押し出すキックです。膝の向いているほうへ、素直にまっすぐ飛びやすいのが Push のよいところです。クロスフィールドのキックパスや、近場へのストレートキックがこれにあたります。

また、関節は伸びていても、軸足が蹴りたい方向へ進みながら蹴るキックも Push です。

使い分けられていないのが、キックミスの正体

パントやスクリューなどは、見た目の形をほとんど変えずに、Strike でも Push でも蹴れてしまいます。たとえばコンバージョンキックを Push で蹴ると、飛距離も出ず、狙ったところにも飛びません。用途によって Strike と Push を使い分けられていないと、ミスになります。

試合で使うキックは、ほとんどが Strike

グレイテスト・ライバリー・ツアー(8月29日)の NZ 対 南アフリカ(2戦目)で、全キックを集計しました。キックパスのような Push のキックはゼロ。ボックスキックやパントキックなど、90%以上が Strike でした。

ラグビーで使う主なキック

  • プレースキック(コンバージョン・ペナルティゴール):Strike。得点を狙うスコアリングキック。詳しくはプレースキックの蹴り方とコツ
  • パントキック(ドロップパント):Strike。自陣脱出など、遠くに飛ばすときのキック
  • スクリューパント(スパイラル):Strike。遠くに飛ばすとき。カウンターで相手のバックフィールドに蹴り込む
  • ボックスキック:Strike。スクラムハーフが、自陣〜ハーフライン付近で蹴る

パントキック(ドロップパント)

自陣から脱出するときなど、遠くに飛ばす場合に使います。ストレートキック(クロスフィールドキック)もドロップパントの一種なので、使う場面は一概には言えません。

スクリューパント(スパイラル)

遠くに飛ばすときや、カウンターで相手の空いたバックフィールドに蹴り込むときに使います。同じモーションで、低い弾道にもできます。相手に落下点を読まれにくいので、相手のキャッチミス(マフ)を誘いやすい一方、キック自体が失敗する可能性も高いキックです。

ボックスキック

スクラムハーフが、比較的自陣〜ハーフライン付近で蹴ります。再獲得を狙う、相手に取らせてカウンターラックを狙う、タッチラインを狙うなど、目的は多岐にわたります。

スクリューパントの注意

「回転をかけなきゃ」という意識は、いったん横に置いてください。回転をかけようとすると、ボールを飛ばす方向へのエネルギーが減ってしまいます。まっすぐ振り抜いて、蹴り足が自然に斜めに抜けるイメージでスイングします。

どこで、どのキックを使うか:プレースキックは敵陣、パント・スクリューは主に自陣、ボックスキックは自陣〜ハーフ付近(グラウンドを上から見た図)

どこで、どのキックを使うか(目安)

  • プレースキック:敵陣。トライ後のコンバージョンキック(2点)、ペナルティキック(3点)
  • パントキック:主に自陣
  • スクリューパント:主に自陣、カウンターの際
  • ボックスキック:自陣〜ハーフライン付近

遠くへ飛ばすには:軸足で止まる

軸足で止まって、慣性の力を使います。

良いアクセル(加速)と、良いブレーキ(止める力)を体に備えることが、キックの質を高めるカギです。助走で加速して、軸足で受け止め、その慣性の力をボールへ伝えます。

うまくなるための練習

1. ボールの重心を感じる

重心に対して衝撃を伝えるドリル(パンチ)で、ボールの重心を感じるところから始めます。

ボールを45°に傾けて持ち、もう一方の手で拳を作って、手前の先端を殴ります。先端から先端へ、衝撃を貫通させるイメージがコツです。

パンチドリルの動画(Instagram)

2. パントキックなら、ドロップドリル

ボールの先端を斜め45°程度に傾けて(後ろが下がり、前が上がる)ドロップします。この角度は、蹴りたい弾道によって変わります。プレースキックと同じく、手前の先端を蹴ります。

3. アップで Push ばかり蹴らない

複数人で「キックのアップをしよう」となると、日本中どこでも、みんなキックパス(Push)ばかり始めます。体に Push の動きばかりが染み込むと、いざというときに Strike が蹴れなくなります。試合でいちばん出番の多い Strike のキックを、アップから蹴りましょう。

4. 自分のキックを動画で確かめる

自分のキックが Push になっているのか、Strike になっているのか。動画を撮って確認してみてください。

よくある質問

Q. キックがうまくなるには、何から始めればいい?

A. ボールの重心を感じることです。重心に対して衝撃を伝えるドリル(パンチ)から始めてください。

Q. 一人でできるキックの練習は?

A. パントキックなら、ドロップドリルです。

Q. キックで一番大事なことは?

A. 用途によって、体の使い方を変えることです。

Q. キックの飛距離を伸ばすには?

A. 軸足で止まること。慣性の力を使うことです。

自分のキックを直接見てほしい方へ

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